月の神子 後編
続き。
そういやこの話のグリレは16〜17くらいだと思って書いてます。
※以下、ブルーさんがなかなか損な役回り。というか名前だけ一緒の別人だと思ってくれて結構です!それだけキャラが違う。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そういやこの話のグリレは16〜17くらいだと思って書いてます。
※以下、ブルーさんがなかなか損な役回り。というか名前だけ一緒の別人だと思ってくれて結構です!それだけキャラが違う。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
西の空に太陽が落ちていくのを、二人並んで座り、窓から眺めていた。
しばらくそうしていたが、不意にレッドがグリーンの肩に頭を預けてきたため、グリーンはそちらに意識を向けた。
「・・・どうした?」
「怒らないで聞いてくれるか?」
「ああ」
無愛想ながらもしっかり肯定してくれたグリーンを見て、レッドはくすりと笑った。
「俺、本当は『月に帰る』ってこと、誰にも言うつもりはなかったんだ。いつもみたいにさよならして、俺と関わった人の俺に関する記憶だけを連れて月に帰って、二度と会わない。それでいいと思ってた」
「っそれは」
「うん、分かってる。もうそんなこと思ってないよ。今は違う。今はね、俺のこと全て覚えていて欲しいんだ・・・・グリーンに。今も今までも、これからも、ずっと」
「・・・当たり前だ。俺は幾つになってもお前のことを記憶し続ける。たとえ死が俺達を引き離しても」
「・・・・・ありがとう」
二人で顔を見合わせて、また、笑う。
―――そんな幸せなひと時が、ずっと続くと思っていた。
しかし突然、辺りを急にまばゆい光が覆った。
「!?」
「なに・・・っ」
「お迎えにあがりました、殿下」
その場に今まで存在しなかった凛とした女性の声が響く。その声を聞いた瞬間、顔を伏せていたレッドが驚愕したように呟いた。
「ブルー・・・か?」
「ええ、その通りです。随分とお探しいたしましたわ」
言う女性の、まるで神話に登場する天女のような装いと、レッドの発言から、この女が月よりの使者だとグリーンは確信した。
すばやく身体の後ろにレッドを庇い、刀を構える。だがブルーと呼ばれた女は少しも恐れを感じた様子を見せず、ゆっくりと二人に近付いた。
「止まれ、近寄るな。この家の周りには多くの兵士達がいたはずだが・・・そいつ等はどうした?」
「心配なさらずとも、殺してはおりません。意識を失わせただけです。ほら、こんな風に武器を奪って」
「っ・・・・!」
ブルーがその白く細い指先を動かす。ただそれだけで、グリーンの持っていた武器は小屋の隅まで弾き飛ばされた。
「・・・不思議な力を使うな」
「ええ、[ヒト]ではありませんからね。・・・さ、帰りましょう殿下」
「嫌、だ」
レッドはかすかに震えながら、グリーンの背中にしがみついて、申し出を拒絶した。
「俺以外にも、継承権を持つ皇子はいくらでもいるはずだ!!」
「確かにそうですが、あなたは現帝にもっとも溺愛されているのですから。皇帝は、あなたを是非跡継ぎにと所望されていらっしゃいます」
「・・・っそれでも!!」
「どうしても来ていただけないのなら」
ブルーがまた指を動かしながら、何事か呪文を唱える。すると信じられないことに、小屋の中に落ちていた”影”がまるで生き物のようにするすると動き、グリーンを拘束した。
「何だこれはっ」
「グリーン!!!」
「この人間をここで始末していきます。彼がいるから、あなたはこの世界に未練があるのでしょう?」
影がまた蠢き、グリーンの首を絞めようとするように身体を這い上がった。
「やめろっ!!!!」
素早く首に到達した影が今にも力を込めようとしているのを見て、耐え切れずレッドは叫んだ。
「・・・分かった。・・ちゃんと帰る、から・・・」
「レッド!!!」
「話が早くて助かりますわ。一度口にしたことは何があっても破ってはならない・・・月国の掟を忘れないで下さいませね」
ブルーが再び呪文を唱えると、拘束していた影は身体から離れて暗闇に戻っていった。『最後に話をしたい』と言うレッドの言葉に従って、ブルーは小屋から出て行く。だがそう離れてはいないところで、グリーンがレッドを連れて逃げやしないかと警戒しているのがひしひしと感じられた。
「レッド・・・、」
「ごめんな、グリーン。折角守ろうとしてくれたのに」
そんなことはいい。
謝罪などよりも余程聞きたい言葉が、伝えなくてはならない言葉があった。
グリーンはその思いに突き動かされるままに、口を開いた。
「好きだ」
「・・・・!!」
「俺は、お前が好きだ。愛している。たとえ二度と会えなくても、ずっとレッドを想い続ける」
それは自分の不甲斐無さのせいで帰ることになってしまったレッドに、「行くな」と言えない代わりに告げる、一途な愛だった。
「うん・・・うん、俺も。
たとえもう会うことが出来なくても、俺もずっと、グリーンのことが好きだ」
「レッド・・・」
「・・・本当は、もっと一緒にいたかった。秋の紅葉とか、冬の雪とか、春の桜とか・・・一度でいいから、二人で行ってみたかった。
彼岸花も、見たかったなぁ・・・・!」
言い終わる前に、堪え切れずにレッドは涙をこぼした。それを見てグリーンは己の無力さを痛感するように唇を噛み締め、涙を流すレッドの頭を抱き寄せた。
しばらくすると、泣き声が徐々に小さくなってくる。抱えていた頭を離してグリーンが顔を覗き込むと、レッドは赤く腫らした目で、それでもどこか吹っ切れたように小さく微笑んだ。
「・・・ありがとう」
「・・・どういたしまして」
見つめ合い、どちらからともなく顔を近付け、最初で最後であろう口付けをかわす。
「じゃあ、ね」
「ああ・・・さよなら」
羽の生えた馬の引く車に乗り込むため、レッドはグリーンに背を向けて、そちらに歩いていく。遠ざかる背中に、グリーンは最後にもう一度、声をかけた。
ほんの少しの、希望を込めて。
「またな」
その言葉に、レッドは驚いたように振り向いて。しばしの後、にっこりと太陽のような笑顔で、言った。
「またな!!!」
その後長い時が経ち、二人が再会出来たのかどうかは、誰も知らない。
ただ、賢帝と名高かった帝の墓の周辺には、それはそれは美しい、彼岸花が咲き誇っていた。
あなたの傍にいる。
たとえ月が二人の間を裂いても、ずっと。
しばらくそうしていたが、不意にレッドがグリーンの肩に頭を預けてきたため、グリーンはそちらに意識を向けた。
「・・・どうした?」
「怒らないで聞いてくれるか?」
「ああ」
無愛想ながらもしっかり肯定してくれたグリーンを見て、レッドはくすりと笑った。
「俺、本当は『月に帰る』ってこと、誰にも言うつもりはなかったんだ。いつもみたいにさよならして、俺と関わった人の俺に関する記憶だけを連れて月に帰って、二度と会わない。それでいいと思ってた」
「っそれは」
「うん、分かってる。もうそんなこと思ってないよ。今は違う。今はね、俺のこと全て覚えていて欲しいんだ・・・・グリーンに。今も今までも、これからも、ずっと」
「・・・当たり前だ。俺は幾つになってもお前のことを記憶し続ける。たとえ死が俺達を引き離しても」
「・・・・・ありがとう」
二人で顔を見合わせて、また、笑う。
―――そんな幸せなひと時が、ずっと続くと思っていた。
しかし突然、辺りを急にまばゆい光が覆った。
「!?」
「なに・・・っ」
「お迎えにあがりました、殿下」
その場に今まで存在しなかった凛とした女性の声が響く。その声を聞いた瞬間、顔を伏せていたレッドが驚愕したように呟いた。
「ブルー・・・か?」
「ええ、その通りです。随分とお探しいたしましたわ」
言う女性の、まるで神話に登場する天女のような装いと、レッドの発言から、この女が月よりの使者だとグリーンは確信した。
すばやく身体の後ろにレッドを庇い、刀を構える。だがブルーと呼ばれた女は少しも恐れを感じた様子を見せず、ゆっくりと二人に近付いた。
「止まれ、近寄るな。この家の周りには多くの兵士達がいたはずだが・・・そいつ等はどうした?」
「心配なさらずとも、殺してはおりません。意識を失わせただけです。ほら、こんな風に武器を奪って」
「っ・・・・!」
ブルーがその白く細い指先を動かす。ただそれだけで、グリーンの持っていた武器は小屋の隅まで弾き飛ばされた。
「・・・不思議な力を使うな」
「ええ、[ヒト]ではありませんからね。・・・さ、帰りましょう殿下」
「嫌、だ」
レッドはかすかに震えながら、グリーンの背中にしがみついて、申し出を拒絶した。
「俺以外にも、継承権を持つ皇子はいくらでもいるはずだ!!」
「確かにそうですが、あなたは現帝にもっとも溺愛されているのですから。皇帝は、あなたを是非跡継ぎにと所望されていらっしゃいます」
「・・・っそれでも!!」
「どうしても来ていただけないのなら」
ブルーがまた指を動かしながら、何事か呪文を唱える。すると信じられないことに、小屋の中に落ちていた”影”がまるで生き物のようにするすると動き、グリーンを拘束した。
「何だこれはっ」
「グリーン!!!」
「この人間をここで始末していきます。彼がいるから、あなたはこの世界に未練があるのでしょう?」
影がまた蠢き、グリーンの首を絞めようとするように身体を這い上がった。
「やめろっ!!!!」
素早く首に到達した影が今にも力を込めようとしているのを見て、耐え切れずレッドは叫んだ。
「・・・分かった。・・ちゃんと帰る、から・・・」
「レッド!!!」
「話が早くて助かりますわ。一度口にしたことは何があっても破ってはならない・・・月国の掟を忘れないで下さいませね」
ブルーが再び呪文を唱えると、拘束していた影は身体から離れて暗闇に戻っていった。『最後に話をしたい』と言うレッドの言葉に従って、ブルーは小屋から出て行く。だがそう離れてはいないところで、グリーンがレッドを連れて逃げやしないかと警戒しているのがひしひしと感じられた。
「レッド・・・、」
「ごめんな、グリーン。折角守ろうとしてくれたのに」
そんなことはいい。
謝罪などよりも余程聞きたい言葉が、伝えなくてはならない言葉があった。
グリーンはその思いに突き動かされるままに、口を開いた。
「好きだ」
「・・・・!!」
「俺は、お前が好きだ。愛している。たとえ二度と会えなくても、ずっとレッドを想い続ける」
それは自分の不甲斐無さのせいで帰ることになってしまったレッドに、「行くな」と言えない代わりに告げる、一途な愛だった。
「うん・・・うん、俺も。
たとえもう会うことが出来なくても、俺もずっと、グリーンのことが好きだ」
「レッド・・・」
「・・・本当は、もっと一緒にいたかった。秋の紅葉とか、冬の雪とか、春の桜とか・・・一度でいいから、二人で行ってみたかった。
彼岸花も、見たかったなぁ・・・・!」
言い終わる前に、堪え切れずにレッドは涙をこぼした。それを見てグリーンは己の無力さを痛感するように唇を噛み締め、涙を流すレッドの頭を抱き寄せた。
しばらくすると、泣き声が徐々に小さくなってくる。抱えていた頭を離してグリーンが顔を覗き込むと、レッドは赤く腫らした目で、それでもどこか吹っ切れたように小さく微笑んだ。
「・・・ありがとう」
「・・・どういたしまして」
見つめ合い、どちらからともなく顔を近付け、最初で最後であろう口付けをかわす。
「じゃあ、ね」
「ああ・・・さよなら」
羽の生えた馬の引く車に乗り込むため、レッドはグリーンに背を向けて、そちらに歩いていく。遠ざかる背中に、グリーンは最後にもう一度、声をかけた。
ほんの少しの、希望を込めて。
「またな」
その言葉に、レッドは驚いたように振り向いて。しばしの後、にっこりと太陽のような笑顔で、言った。
「またな!!!」
その後長い時が経ち、二人が再会出来たのかどうかは、誰も知らない。
ただ、賢帝と名高かった帝の墓の周辺には、それはそれは美しい、彼岸花が咲き誇っていた。
あなたの傍にいる。
たとえ月が二人の間を裂いても、ずっと。
| ホーム |


